活動方針
岩手県小学校長会は、昭和38年結成以来、本県小学校教育の振興発展に寄与すべく、絶えず真摯な研鑽と実践を重ねるとともに、会の総力を挙げて教育諸条件の整備に努めてきた。この半世紀以上にわたる間、幾多の困難に直面しながらも、その課題解決に主体的に取り組み、多くの成果を上げ今日に至っている。
現在、我が国は、グローバル化や情報化、少子高齢化、人口減少等の社会の急激な変化に伴う高度化・複雑化した諸課題に直面している。加えて、感染症や気候変動、自然災害等への対応も迫られ、予測困難な時代の中で、多くの解決すべき課題を抱えている。
このような社会を生き抜く力を育成するため、学校には「基礎的・基本的な知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力等の育成」「学びに向かう力や人間性等の涵養」の三つの学力をバランスよく育み、持続可能な社会の作り手を育てる教育の実現が求められている。
そのために学校では、ICTの活用等による教育DXの推進や「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を通じた「主体的・対話的で深い学び」の実現に取り組むとともに、学校における働き方改革の推進、教員不足の問題、心身に不調を抱える教員の増加、特別支援を要する児童への対応、不登校やいじめ対応等、顕在化してきた多くの教育課題に取り組む必要がある。特に、教職員のウェルビーイングの向上は、諸課題を解決し、質の高い教育の維持と人材育成を図るために欠かせない視点である。
さらに「いわての復興教育」においては、これまでの13年間の歩みにおいて教育の復興や「ひとづくり」の推進に大きな役割を果たす一方、震災や復興教育に関する教職員の世代間の認識の差や意識の低下等の懸念が生じてきていることから、復興教育に課せられた意義を再認識し、継承すべきことを確実に引き継ぎ、高い使命感をもって岩手の復興・発展を支える子どもの育成を進めていく必要がある。
このような状況を踏まえ、私たち校長は、今年度より新たに策定された「岩手県教育振興計画」の基本目標である「学びと絆で 夢と未来を拓き 社会を創造する人づくり ~自分らしい生き方の実現にむけた 新たな時代のいわての教育」の実現に向け、学校組織の活性化を図り、創意に満ちた特色ある学校経営を推進する必要がある。また、いじめや不登校、学校不適応問題等への組織的できめ細やかな対応、一人一台端末の効果的活用や情報モラル教育の強化、特別支援教育の充実、学校における働き方改革の推進や教職員の資質能力の向上等、直面する教育課題に迅速かつ適切に対応し、教職員一人一人が安心して各自の力を発揮できる職場づくりを進めるとともに、魅力ある学校づくりを一層推進する必要がある。
岩手県小学校長会は、こうした現状を深く認識し、「明日を拓く岩手の絆」を会員の総意としながら、本県学校教育の現状と課題の把握に努め、東日本大震災やコロナ禍等における学校経営を通して学んだ校長の決断の重さを忘れることなく、校長自らの使命を自覚し、教育的識見を高め合う必要がある。
また全国連合小学校長会や東北連合小学校長会と効果的に連携しながら、教育活動の一層の充実と向上のため、会員相互の情報共有を図り、英知と情熱を結集し、経営ビジョンや戦略を明確にもち、校長としてのリーダーシップを存分に発揮し、家庭や地域の信託に応えていかなければならない。
そのため、今年度の本会の活動方針を以下のとおり定める。
1 創意に満ちた特色ある学校経営の充実
国や県の教育改革の動向や新学習指導要領の趣旨、復興教育の方向性を的確に把握し、家庭や地域との連携・協働を推進しながら、確かな経営理念のもと、社会に開かれた教育課程の編成と着実な実施、評価、改善を行い、「生きる力」を育み、より一層創意に満ちた学校経営の充実に努める。
2 教育の復興に向けた支援
東日本大震災対策特別委員会の設置を継続し、被災地区の学校運営上の諸課題や本県全体の復興教育の現状を的確に把握し、課題の改善に向けた発信や取組を行い、復興教育の充実を図る。また震災後13年の経過を振り返るなど計画的に情報共有し、震災の教訓を未来に継承する活動の充実を図る。
3 専門職としての識見、力量の向上と教職員の人材育成の推進
校長自らが主体的に学び続ける姿勢をもち、高い同僚性と多様な専門性を有する教職員集団の形成を目指し、主題研究や調査活動等に取り組み、校長としての識見や指導性を高めるための研鑽に励む。同時に、教職員一人一人の経験、職責等のニーズに応じた研修内容等について、対話や研修履歴の活用を通じた助言、指導により、教職員の人材育成と専門性の向上に資する取組を推進する。
4 人間尊重の精神を培う教育の推進
いじめや不登校、学校不適応問題や情報モラル等への適切な対応に向け、規範意識を高め、人間としても生き方について考えを深める教育を推進する。また、自ら考え判断する力を養い、多様な価値観の存在を認めるとともに、自他のかけがえのない生命を大切にし、ともにより良く生きようとする資質や能力の向上に向け、人間尊重の精神を培う教育を推進する。
5 障がいのある子どもの支援体制の充実に向けた特別支援教育の推進
障がいのある子どもの自立を促し、社会の一員としてよりよく生きるための資質・能力の育成に向け、一人一人の教育的ニーズを把握しながら、もてる力を高め、生活や学習の困難を改善、克服するために適切な指導や支援の充実を図る。また、特別支援学級の学級編成基準の改善等、支援体制の拡充を図る取組や教職員の専門性を高める研修を推進するとともに、関係機関との連携体制の整備を進め、特別な支援を要する子どもの多様な学びの場の充実に努める。
6 教職員のウェルビーイングの向上に向けた学校における働き方改革の推進
教職員一人一人の日々の生活や教職員人生を豊かにすることが、よりよい教育活動に資するものであるという学校における働き方改革の趣旨を踏まえ、高い問題意識をもって現状と課題の共有に努める。また、教職員の健康面での安心感や業務への充実感等ウェルビーイングの向上に向け、情報交換の機会の充実を図るとともに、地域社会や関係諸機関、関係諸団体と連携した環境改善等の取組を推進する。
7 教育諸条件の改善に向けた取組の促進 GIGAスクール構想におけるICT環境や人的配置を含めた教育環境の状況、感染症対応等、教育環境に関わる情報の共有に努めながら、安定した学校生活と質の高い教育を子どもたちに保障するため、関係諸機関、諸団体と連携しながら人的措置の充実や環境整備等、教育諸条件の改善・整備への取組を促進する。
8 広報活動の充実と会員相互や関係団体との連携強化 地区校長会との連携を密にしながら、教育実践や復興教育、各地区の現状と課題等に関する情報交流など、広報活動の一層の充実と会員相互の連携強化に努める。また、全国連合小学校長会、東北連合小学校長会との連携を重視し、研究大会・調査活動等に積極的に参加・協力する。